人気ブログランキング | 話題のタグを見る

House Rabbit Society


随分と投稿に時間が空いてしまいました。
振り返ってみると、1月は今年こそがんばって記録をつけるぞ! とはりきった様子がみられますが、その後ほとんど投稿ナシ(苦笑)。3日坊主ならぬ1ヶ月坊主?!
2月遊んだ分を取り戻すのに必死だったのと、もともと春は会議が混んでいて時間的余裕がなかったことが敗因です(汗)。その間に、コメントやトラックバックをいただいていて全く気付かず、随分長い間放置してしまいました。
コメント下さった皆様、すみません!

さて、久々の投稿は、ちょっと悲しい報告です。
このブログにも写真をはってある、うさぎのろし太が、去勢手術の際に麻酔から目が覚めず亡くなりました。もう、一ヶ月近く前のことになりますが……
一般に、雄の去勢手術はもっとも容易な手術の部類に入り、それなりにウサギに経験のあるお医者さんに執刀してもらえるなら、死亡率は0.5%を切ると言われています。
死亡例の殆どが麻酔によるもので、その場合は先天的に何か問題があったり、既に何か重大な疾患を抱えている場合が殆どだとのことです。
ろし太も手術そのものは問題なく成功したものの、手術後呼吸が弱くなり、そのまま亡くなったとのことでした。ウサギに非常に慣れている、経験のあるお医者さんに執刀してもらいましたが、先天的に問題があったのか、以前やられたエンセファリトゾーン寄生虫に、脳の呼吸器官を司る部分を既に傷つけられていたのかもしれません。

しばらく呆然として何も手につきませんでしたが、最近、ようやく気持ちもおちついてきたので、今回のことで世話になったHRSについて少し紹介したいと思います。

注:以下、誤解を招きかねない表現もあります。読むなら、必ず最後まで読んで下さい。一部分のみ目を通して引用、コメントなどなさらないよう、くれぐれもお願い致します!

***

HRSは、House Rabbit Societyの略、アメリカで多分一番大きな飼いウサギに関する非営利団体だと思います。これは、各州に支部もある歴史のある団体で、日本のウサギガイドブックなんかに書かれている内容にはHRSから得た情報と思われるものもたくさんあります。
HRSの使命は、飼いウサギに関する正しい情報を提供し、飼い主に学ぶ機会を与えること、それからもちろん、シェルターなどから引き取り手のいないウサギをひきとり、里親を探す事です。

キリスト教圏には「イースターバニー」の習慣があり、イギリスやアメリカでは、復活祭(イースター)の時に親が子供にウサギを買い与える習慣があるようです。
大昔は、ウサギはライブストックとして普通に飼われていましたから、それの世話を子供に任せる、という話だったのかもしれないのですが、この習慣が、実は毎年相当な数の不幸なウサギを生み出しています。
つまり、ウサギというのは普通鳴かない(小さな声でぶーぶー鳴くことはあるが、気持ちのいいときや危険が迫った時など非常に限られた機会のみ)ので、子供が世話に飽きて餌や水やりを忘れても、それを飼い主に知らせる手段がないのですね。
そのうえ、ウサギは犬や猫ほど親密に飼い主にじゃれついたりしない。
というわけで、大抵の子供は、すぐにウサギに飽きて、世話も怠りがちになります。
親が気付いて世話をすればいいですが、勿論そうでない親もいるわけで……
毎年、イースターの後半年間、相当な数のウサギがシェルターで安楽死の運命を辿り、捨てられて生き延びる事が出来ずに野犬に殺され、飼育放棄されて餓死する、といった状況だそうです。

そういう背景からか、イギリスやアメリカにはウサギの愛護団体が比較的多いようです。日本の状況を思うと非常に恵まれているとも言えますが、夥しい数の悲しい一生のうさぎさんたちが背景にいると思うとなかなか複雑です。
HRSでは、そういった状況に手を打つべく、引き取り手のいないウサギを預り、去勢/避妊手術を施し、トイレのしつけや病気の治療をして、里親を探しています。
同時に、うさぎのオーナーへ正しい知識をすべく、会員へのニュースレターの発行や各地でのイベントを行っています。
一般の人達への啓蒙なども勿論行っていますが、その中に、徹底した去勢/避妊手術の推奨、繁殖に対する牽制、新しいウサギを買い求める事への再考を促す姿勢がみとめられます。

去勢、避妊手術に関しては、メスの場合は特に高齢になると子宮がんを煩う可能性が高く(70%以上とHRSでは報告している。もとになった論文は50年代に発表された1本の論文であるらしい)、健康上の問題であるとも言えます。
去勢は、尿をとばすなどの行為を抑えるため、あるいはやはり高齢になった時の生殖器系トラブルを避けるためであり、日本のガイドブックに載せられている内容とほぼ同じです。
ただし、日本では、「繁殖の予定がないかぎり」 手術をするのが好ましい、などの表現になっていたり、あるいは麻酔事故の事にも触れて、よく考えて決めるよう促すに止めることが多いようですが、HRSでははっきり去勢/避妊をすべきである、という態度を打ち出しています(これについては賛否両論あるでしょうが)。

それは、ブリーダーでない限りは繁殖はさせるべきではない、という姿勢から考えても一貫しています。日本では、「繁殖させるなら責任をもって全ての子ウサギの里親をみつける」などの注意書きはあっても、そこまで強い姿勢はみられません。
つまり、「生まれてくる子供は、多くのホストファミリーを待っているウサギ達の住処を奪う」というのがHRSの姿勢であって、それは彼等の活動目的を考えれば非常につじつまの合った主張です。日本なら、ペットショップに喧嘩を売っているのか、と問題になるところでしょうが、それが言い切れてしまうところが凄い。つまり、堂々とペットショップの利に反する事を主張しているわけですから。

それは、更に、最後の、「ペットショップで買わない」という呼びかけにも通じています。
理由は上と同じ、ペットショップから買う前に死に直面しているウサギたちに機会を与えてくれ、ということなのですが、そこで、ただ単に感情論でそう訴えているわけではないところが、HRSの凄い所です。
これには、ウサギという、犬や猫より少しばかり扱いの難しい動物の事情が反映されています。

まず、ウサギというのは、犬猫にくらべると非常に弱い生き物です。もともと補食される運命のウサギは、一個体の生命力の強さの代わりに、そのすさまじい繁殖力で個体数をかせぎ絶滅を逃れてきた背景があります。そのため、彼等は簡単に命を諦める傾向があります。
(驚かすと心臓を止めてしまう、というのは誇張ではなく、本当です。捕まって生きていて、いいことは何もありませんから)
子ウサギになると、更に弱く、ちょっとした気温変化やストレスなどで、簡単に死んでしまいます。ペットショップにいるウサギは、店に来るまでにあちらこちらをひきまわされて疲れ切っている傾向があり、ウサギ初心者には扱いが難しい、というのが一点。
その点、HRSが譲るウサギ達は、ウサギのエキスパート達が十分に健康管理をして、様子をみた上で譲り渡すので、飼い主の負担は大幅に減ります。

もうひとつは、ウサギは基本的に臆病なので、犬猫ほど簡単にはなつかない、ということです。ウサギにもフレンドリーな個体から怯えて人間に近寄ろうともしないのまで様々です。
ペットショップでは、その子が将来ナーバスなウサギになるか、フレンドリーなウサギになるかまでは分かりません。が、HRSでは十分にウサギの性格を見極めたあとで、飼い主との相性をみるため、「なつかないから可愛くない」と飼育放棄につながる危険を減らすことができます。

そういうわけで、彼等の主張は、「ウサギを売るのは誰にでも出来るが、HRSはあなたの友達を探すよ!」という一点に尽きます。
ペットを気の合う友達としてではなく、ブランドや血統で選んでしまう事の多い日本ではなかなか浸透しない考えなのかもしれませんが……
これがただの方便ではないことは、HRSではなくシェルターから直接ウサギを譲り受ける際にも、希望があればそのアドバイスのため人員を派遣する、という姿勢から伺えます。

実は、はずかしながら、私は今まで、アメリカの動物愛護団体というのはどこか考えの偏った人達の集団だと、勝手に偏見を持っていました。
しかし、今回、ろし太がなくなって、家に居る他の2匹のメス達のパートナーとなるオスウサギをHRSから譲り受けるにあたって、彼等の活動が非常に理にかなったものだということがよく分かりました。
ホストファミリーがみつかったのだから、喜んで譲っておわりかと思いきや、なんと2回のお見合い(うちにいる他のウサギたちとの)+試用期間つきです(笑)。
つまり、メスうさぎたちとうまくやっていけるかどうか数週間様子をみて、だめなら再びHRSに連れ戻される、とのこと(笑)。
一般にメスウサギは縄張り意識が強いので、やり方を間違えると激しいバトルになります。
そうならないよう、非常に細かいインストラクションをもらい、何度も手順の説明を受けました。
ウサギ関係(?)がうまくいかない家で、寂しい一生を送らせるくらいなら、別のホストファミリーにもらわれた方がウサギも飼い主も幸せだ、という確固たる信念が伺えます。

私が会員になっているWisconsin HRSは、今年15周年だということで、ニュースレターにもその記事が溢れていました。その中で、WHRSから巣立って行った最初の一羽の写真と、おそらく現時点で一番のニューフェースだと思われる子の写真がありました。最初の子はもちろん、No.1。最後の子はNo.532でした。
15年で、500匹……。救い出せなかった子の数は、きっとその何十倍にもなるでしょう。それでも、妥協せず、ウサギと飼い主の幸せを願って、一頭一頭のケアと飼い主への教育を続けるHRSボランティアの皆様の情熱には頭が下がります。
もともと感動しやすいアメリカ人の感情に訴えて、とにかく里親を探す事に集中すれば、アダプションの数自体はもっと伸びたかも知れません。でも、HRSが目指しているのはそういうことではなく、文字通り、一生よい関係がつづく「Friend」を探すことだという、その一言に尽きるのだと思います。

こういうことは、個人ではやっぱり難しいですよね……。
日本にも、こういう組織できないかなあ。。。
(自分がつくれ、という声が聞こえてきそうですが(苦笑))
by lily_lila | 2007-08-24 12:09 | 我が家のうさぎ

渡米生活日々の備忘録。


by lily_lila