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渡米生活日々の備忘録。
by lily_lila
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チャイコフスキーさんごめんなさい、の話(続:おすすめのピアノ協奏曲)
以前「おすすめのピアノ協奏曲」というエントリーを書いて、あの有名なチャイコフスキーの協奏曲第1番を「冒頭以外つまらん」と選外にしてしまったのですが、高木裕氏の「現在のピアノでショパンは弾けない」という本を読んでちょっと悪かったかな、と思いました(笑)。

今のピアノでショパンは弾けない (日経プレミアシリーズ)




えらく挑発的なタイトルの本ですが、内容は全然そんなことはなくて、非常に面白い本です。
というか、私の長年の疑問を一気に解決してくれました。

先のエントリで、私がおすすめ協奏曲を選んだ基準には、「オケとピアノが喧嘩していないか」というのが非常に大きく反映されています。
私は、「オーケストラ」と「ピアノ」の「協奏曲」が聞きたいのであって、ピアノがオケを捩じ伏せようとガンガン、キンキンがなりたてなければならないような曲は、そもそもオーケストレーションに問題がある、と思い込んでいました。

……が。

高木裕氏のこの本を読むと、チャイコフスキーの生きた時代にはピアノのポテンシャルがもっともっと高く、そんなに頑張らなくてもちゃんとオケを突き抜けて音が観客に伝わったのだ、ということがわかります。

それで、ようやく納得。
なぜホロヴィッツがあんなにも美しく自在にタッチを変えたり、内声を響かせたりできたのか。
(私自身は熱心なホロヴィッツのファンではありませんが、それでもやはり彼の表現力には大変驚かされます)
それと、レコーディングではかなり表現力があると思われても、コンサートではその表現の幅が狭く感じる気がするのは何故か。(多分緊張のせい? とか思っていたのだけど、なんとも腑に落ちませんでした)

懐古趣味も結構ですが(というか私もかなりその傾向がありますが)これだけホロヴィッツが神様扱いされていて、まあ凡人は真似るな、とは言われるでしょうけど、それでもあの音色や表現力の多彩さを後続のピアニストが目指さないわけがあるか?
そんなはずはないし、その後の職業ピアニストの数を考えたら、とうの昔に彼のレベルの表現力が再現できていて良いはずだ、とずっと思っていたのです。

ピアノは「工業製品」であり、ずっと進化し続けているということ。
そして、近年はコンサートに自分専用ピアノを「搬入」するだけの資金力がスポンサー側になくなってしまったために、誰でもその場で弾ける平均的な楽器しか使えなくなってしまった、というのがネックらしい。
そう考えれば、コンサートよりは調律にも指ならしにも時間がとれるレコーディングの出来と、コンサートの出来が違ってても不思議ではないです。

自前の楽器が使えれば、自分の表現力が最大限に発揮出来るように楽器をチューニングしたり、選んだりすることが出来ます。というか、弦楽器でも管楽器でも、ピアノの演奏家以外はほとんどそうですね。
曲によって楽器を持ち替えたり、弦を変えたり、なんてのは当たり前ですし、その楽器の癖もあります。
上の本には、ホロヴィッツが好んだ古いスタインウェイのピアノには、3本の弦をわざと長さを微妙に変え、完全にピッタリ合わせないことで音の減衰長を延ばし、更にタッチによって倍音も変えることができる仕組みになっていたことが書かれています。
現在は、このシステムはチューニングが難しいため、スタインウェイも取り入れていないそうです。

チャイコフスキーがこのようなハイスペックのピアノと、それを弾き熟せる熟練したピアニストを想定して曲を書いていたのなら、彼がイメージしていた「協奏曲」は、あの分厚いオーケストラを相手にしても十分にピアノの音が浮き上がってくるような、そんな音であったと思われます。
(まあ、この曲は書いた直後からピアニストに酷評されていますので、そうだとしても相当な名手を想定していた、ということになりますけど(笑))

というわけで、前言(ちょっとだけ)撤回。
チャイコンの1番が「最初だけ派手であとはつまらん」のは、もしかしたら現在のピアノがあまりよろしくないせいもあるかも、、、という話でした(笑)
(……まあ、それにしても、あまりアピーリングな感じはしないんですが、演奏家のポテンシャルというのは、そういうものを素晴らしい音楽にしてしまうところにあるわけで、、、)

ところで、この本、ピアノという楽器の進化の担い手を日本がアメリカから受け継いだのに、そのことに気づかずに進化をとめてしまった、という指摘がなされていて、大変ドキリとしました。
ピアノが「工業製品」であったおかげで、日本のヤマハが世界のヤマハになりました。
その過程で、自分達がピアノの進化のバトンタッチをされている、という自覚があれば、もっと現在は違う世界が開けていたかも知れない、と思うと、たしかに残念です。
(もっとも、最近のヤマハピアノは本当に良い音がするようになったと思いますので、そこは進化したのでしょうが…。)
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by lily_lila | 2014-08-20 03:10 | 音楽
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